ヘンデル 合奏協奏曲
作品6の12 第5楽章は、フーガの楽曲構成です。その主題は、ヘンデルがハレで最初に音楽を習ったFriedrich Wilhelm Zachow (1663 — 1712)の組曲ロ短調の最終フーガに由来します。
Zachow(ツァハウ)はヘンデルに対してハーモニーの原理を教えることを指導の中心にしたようです。またドイツ音楽だけでなくイタリア音楽の作品のコレクションも持っており、特定の枠にはめ込まず、ヘンデルの想像力を伸ばすことに大いに貢献したものと考えられます。
師ツァハウによるレッスンに用いた練習帳を終生大切に保管して、作曲のヒントにしたようです。またこの練習帳を、ヘンデルが後に弟子J.C.スミスを教育する際の教材として用いました。その縁があって、ヘンデルの死後は、スミスにこの練習帳が受け継がれ、さらに、スミスの義理の娘レディー・リヴァースのもとにありましたが、19世紀に行方不明となりました。
この練習帳が再発見されれば、ヘンデルの作曲スタイルや借用について、画期的なことがわかると思います。
このヘンデルの合奏協奏曲とツァハウの最終フーガを比較検討することでも、ヘンデルの音楽の特徴を浮き彫りにすることができます。ヘンデルの他のフーガ作品の分析も必要ですが、ヘンデルの作品の秘密を垣間見ることができます。
ツァハウのフーガのテーマの根幹部は3小節ですが、ヘンデルでは、1小節加えて4小節+αにしています。これは、α部分をある音程に持って行きたいために延長したと考えられます。
この主題の扱い方だけでなく、ヘンデルの作品には、三連符を使って、リズムに変化をつける工夫もなされています。