2017年5月23日火曜日

特別展 快慶 阿弥陀如来立像のシンボリズム

小椋の大黒 2015年6月 京都府立植物園


奈良国立博物館で開催されている「特別展 快慶」は後半になって展示物の入れ替えがあり、特に最後の展示室(第7章 安阿弥陀様の追求)に新たに2体が加わり、様式の変遷を観察するのに充実しています。

今回の観覧では、立像の基部に注目しました。

阿弥陀如来立像はそもそも、善良者が往生する際に、阿弥陀如来が紫雲に乗り、観音菩薩と勢至菩薩を従えて往生者を迎えに来るという来迎の場面をもとにしたものです。3者とも蓮台に載っています。

ですから、阿弥陀如来立像の基部には、蓮台と紫雲の両方が表現されるはずで、実際、蓮台はどの立像にもあり、紫雲は一部の阿弥陀如来立像にあります。
この紫雲の造形はとても興味深いもので、いずれの紫雲もその後部が立ち上がっています。これは、阿弥陀如来と蓮台が下降しているため、移動方向と逆の位置で紫雲が湧き上がるというダイナミックな様子を表したものと思います。

つまり、阿弥陀如来は静かに立っておられる(静的状態)のではなく、来迎の移動中(動的状態)なのでしょう。
この動的状態という阿弥陀如来立像の見方に関連して発見したもう一つの点が、足の位置です。快慶作だけでなく、ほとんどの阿弥陀如来立像が左足をほんのすこし前に出しておられます。歩いているというほどではないのですが、このわずかな非対称が、往生者に接近するその瞬間をよりダイナミックに表現しているように思います。

ちなみに、地蔵菩薩立像は、この特別展で確認できた限りでは左足ではなく右足を出しており、藤田美術館蔵の地蔵菩薩立像(展示品目79番)では、その足の左右非対称が、脚部では、その左右のずれが着衣にも現れています。

花托


蓮台については、実際の蓮の花弁と花托、蕊の特徴が蓮台の造形の中にシンボリックに表象されていると感じたのですが、一つだけ気になったことは、花托部分が円形ではなく、左右の足の間(つまり立像の正面、前縁)に切れ込みが入っている像が多数あったことです。一般に花芽形成の際の刺激によって、2つの花が部分的に融合したものは時々見かけますが、蓮の花でそのような変形した花托を見たことはありません。

その解釈として2つ考えられると思います。
第一に、他の立像で、岩の上に立っている神将像などでは、左右の足の接地面が分けて表現されており、そのような基本的なモチーフに蓮の花をマッピングしたので、花托にくぼみが残ったというもの。

第二に、赤蓮と白蓮は、宗教のコスモロジー的には異なるものであり、その2つの蓮が融合して蓮台となったというもの。

他にも考えられるでしょう。



2017年5月22日月曜日

Sony 135mm STFレンズ(Aマウント)と90 mm Macro(Eマウント)

Sony Eマウントの100 mm STFレンズ ( SEL100F28GM)の話題がまだ続いているようです。とても素晴らしいレンズだと思います。

ここでは、以前から発売されていた135mm STFレンズ(Aマウント;SAL135F28)Eマウントの90 mm Macro (SEL90M28G)の作例を紹介します。

ラッセルルピナスの作例


1.     Sony α630090 mm Macro (SEL90M28G)ISO 125 1/160s f/5.6 +0.3補正、daylightCapture One 10現像
90 mm Macro (SEL90M28G)



2.     Sony α6500135mm STF (SAL135F28)ISO 100 1/400s t/4.5 +0.3補正、daylightCapture One 10現像
135mm STF (SAL135F28)




3.     Sony α6500135mm STF (SAL135F28)ISO 100 1/400s t/4.5 +0.3補正、daylightCapture One 10現像
135mm STF (SAL135F28)


いずれも京都府立植物園での撮影です。
OSSのついた90 mm Macroをα6300に装着し、OSS機能のない135mm STF(およびSonnar 55mm F1.8)をIBISのあるα6500に装着して併用撮影しています。Capture Oneによる現像は、最小限の調整にとどめています。

135mm STFレンズのボケは本当にきれいで、フォーカスの合った被写体をきれいに浮き彫りにしてくれます。

90 mm Macroもマクロレンズとしては、きれいなぼけ味を出してくれると思いますが、状況によっては、STFレンズと比較してうるさく感じることがあります。

その印象の違いは、空間周波数の成分の違いにあるように思います。
作例12の背景でボケているルピナスの画像を空間微分したものを以下の図で比較しています。

ぼけ部分の空間微分イメージ


厳密な意味での同一条件での撮影の比較ではありませんので、印象にすぎないのですが、90 mm Macroのほうが、空間周波数の高い成分がより多いことがわかります。


FEレンズの100 mm F2.8 [T5.6]レンズの評価は、フォーカス面での像が極めてシャープであること、そこから、フォーカス外に向かってボケが滑らかに変化していくという点で共通しているように思います。

135 mm STFレンズが、開放F2.8に対してT値は4.5(つまり、4/3段の減光)なのに対して、FEレンズの100 mmでは開放F2.8に対してT値は5.6(つまり、2段の減光)となり、両者の明るさの差が2/3段もあるのは、FEレンズの100 mmのほうのレンズ枚数が多いことだけによるものではなく、APDエレメントの周辺減光の度合いがより強いことによるものと思います。

FEレンズ100 mmのほうが、より強いSTF効果を目指しているのでしょう。

SonyノイズキャンセリングヘッドホンWH-1000XM4のトンネルボコッ大幅改善

 SonyノイズキャンセリングヘッドホンWH-1000XM4では、新幹線でのトンネル出入りの際のボコッが、WH-1000XM3と比較して大幅に減少しているようです。 山陽新幹線・九州新幹線ではトンネルが多いため、高速でトンネルに入ったり出たりすると、車内の気圧が急激に変動するため...