赤い唇! Psychotria poeppigiana アカネ科 京都府立植物園 |
奈良国立博物館で現在開催中の特別展
快慶 日本人を魅了した仏のかたち
を、4月中旬に拝見しました。
中でも、興味深かったのは、最後の展示室のテーマ
第7章 安阿弥様の追求
に、快慶の阿弥陀仏の様式変遷を示す展示があったことです。
快慶は熱心な阿弥陀信仰者で、生涯を通じて像高1メートル弱の「三尺阿弥陀」と呼ばれる阿弥陀如来立像を数多く制作しました。
その様式を詳しく調べた専門家によると、時代変遷に合わせて、衣の襟の表現をもとに3つの様式に分けることができ、後期になるにしたがって、襟のたるみの表現に複雑さが増して行きます。その3様式を代表する阿弥陀如来立像が1室に展示され、側面からも拝見できますので、様々に比較することが可能です。
ある一つのスタイル(ジャンル)の作品を1人の芸術家が長い時間スパンをもって多数作り出すのは、その芸術家を理解する上でも、スタイル(ジャンル)を理解する上でもとても貴重なものです。
音楽で言えば、弦楽四重奏曲の形成を、ハイドンとモーツァルトの作品を通じて読み解くことが、これに相当します。
快慶の阿弥陀如来立像の3様式に関しては、「襟のたるみ」という特性以外に、衣のひだ(ドレープ)の数、立ち姿の前傾姿勢、背中の肩のふくらみにも明確な違いがあり、「襟のたるみ」の変化は、それだけにとどまるものではなく、総合的な様式の変化の一つの側面の表出にすぎないのかもしれません。
立ち姿の前傾姿勢の微妙な変化は、像そのものを見る限りはあまり意味のあるものではないように思われますが、これらの像には、現存していないもののそれぞれ光背がついていたことを考慮する必要があります。展示されている3つの立像には、いずれもその基部に光背を取り付けるためのほぞ穴がついていました。
立ち姿の角度の変化はわずかなものであっても、頭部あたりに来ると、光背との距離に明確な差が生じ、得られる印象は違ってくるはずです。
このような仏像様式の微妙な変化は、常設展示されている「なら仏像館」(旧本館)の東アジアの諸仏と比較検討すると、よくわかります。非対称性を好むこと、緻密さの希求、細部へのこだわりなどの日本文化の特徴が、それぞれのジャンル(ここでは阿弥陀如来像の変遷)でどのように形成されていったかを考えることのできる素晴らしい展示会でした。
ところで、日本の国立博物館4館が、同じように提供していた「年間パスポート」の販売が去る3月末をもって終了し、新しい「国立博物館メンバーズパス」に移行しました。この新制度では、特別展に無料で入場できる特典が廃止されました。この「国立博物館メンバーズパス」は、国立博物館4館でほぼ共通の割引サービスを提供するもの(近隣の美術館、博物館の割引サービスについては、購入した博物館により異なる)になり、それとは別に、その博物館だけに適用される特別展の無料入場サービス制度が始まるようです。
奈良国立博物館では「奈良博プレミアムカード」がそれにあたり、一般を例にすると、5000円支払うことで奈良国立博物館で開催される特別展(正倉院展を含む)を1つの特別展について2回、全部で8回無料で入場できます。
今回の展示会の開催期間中にプレミアムカードを購入すれば、快慶展、夏の源信展、秋の正倉院展、それにうまく行けば来年春の特別展を2回ずつ見ることが可能です。
1つの特別展について2回入場できることは意味のあるものです。ほとんどの特別展は、前期と後期で一部の展示物の入れ替えがあり、どちらも見たいと思うことがあるからです。
「年間パスポート」は、京都国立博物館と奈良国立博物館の両方に比較的手軽に行ける人にとっては、とても便利な制度でした。
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