あくまきは南九州、もっと具体的に言えば、旧薩摩藩のエリアとその周辺で端午の節句前後に食べられるお菓子です。
あくまきは、灰汁(あく)+巻きのことで、もち米を灰汁の中につけて下処理したものを竹の皮にくるんで煮込んだものです。
あくまき |
中国料理の粽(ちまき)と関係があるものとされていますが、正確な起源については不明です。西南戦争の際に西郷軍が兵糧食として持参し、その保存性の高さから、熊本地方でも作られるようになったとも言われています。
灰汁はアルカリ性ですので、アルカリ性食品であるから健康によい食べ物とも言われていますが、南九州以外の人々にとっては、灰汁にもち米を浸すことと食物との間につながりがどうしても考えにくく、さらに、たまたま入手しても食べ方が皆目わからないと思います。そこで、食べ方を説明します。
まず、保存法
アルカリ環境で煮込んでいますので、保存性は高いのですが、入手後は冷蔵庫、もしくは冷凍庫で保管します。ところが、そのように保管すると、煮込んでα化していたもち米のデンプンがβ化してしまいます(中央部に硬い芯ができる)ので、食べる前に、あくまきを十分な時間煮沸させます。(電子レンジでも良いかもしれませんが試していません)。あくまきがしっかりした真空パックに入っていれば、パックのまま煮沸してかまいませんが、ラップでくるまれている場合には、ラップを外して、煮沸しても内容物が出てくることはありません(もともと、製造の最後の工程がそのような煮沸処理であったからです)。
そうやって温めたものが、上の写真です。これの竹の皮を広げると、下の写真のようになります。
あくまき 竹の皮を拡げた状態 |
ぶよぶよした茶色のものが現れますので、ここを食べます。竹の皮からはがす際には、手を水で湿らせて扱うと、処理しやすくなります。
次に、竹の皮の端の数ミリを紐状に割きます。その竹の皮の紐を使ってあくまきの塊を数片に切り離します。あくまきの後ろに紐を通して、交叉させると、とても簡単に切り離すことができます。写真の右端に切り離す途中の竹紐を示しています。
この際に、真ん中に芯があれば、さきほどの煮沸が十分になされなかったことを示しています。
あくまきを包丁で切るのはとてもむずかしく、竹の皮の紐を使う(あるいは木綿糸を使う)ほうがとても簡単です。
あくまき 竹の皮の端を割いて用意した紐を使って切り出す |
最後にこの塊に、きな粉と、好みによって砂糖(できればきび砂糖)を混ぜたものをまぶして食べます。
お皿にあらかじめきな粉を敷いておいて、そこにあくまきをのせるほうが扱いやすいと思います。ちなみに、物産展などであくまきを買うと、きな粉をつけてくれます。
あくまき 切り分けたものをきな粉と砂糖を混ぜたものにまぶして食べる |
以前は、それぞれの家庭で作るもので、灰汁が適切なものでなく(樫や椿などの硬い木の灰が良いとされています)、えぐみが強いものもありましたが、物産展などでお菓子屋さんが販売しているものは、とても食べやすくなっています。
あくまきに合わせて端午の節句の食べ物として南九州で欠かせないものが、「かからん団子(だご)」です。柏餅の餅を柏の葉ではなく2枚の「かからん葉」(サルトリイバラの葉)で包んだものです。サルトリイバラでくるむ団子は南九州に限定された食品と思っていましたが、西日本を中心にかなり広く分布しているようです。むしろ、「柏の葉」のほうがサルトリイバラの葉の代用としてサルトリイバラの葉を大量に入手できない江戸で使われるようになったという説もあるようです。
サルトリイバラSmilax china サルトリイバラ科(またはユリ科)2015年7月 京都府立植物園 |
サルトリイバラは根、葉、実ともに漢方薬や生薬として使われていますので、サルトリイバラの葉で団子をくるむことは、理にかなっているものかも知れません。
御菓子処 おくた (奈良市)のかしわもち |
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