嵯峨菊は大覚寺の苑池である大沢池に自生したとされる野菊を、大覚寺が門外不出で育種してきた独特の菊です。
大覚寺は平安時代に嵯峨天皇が離宮を営まれていた場所に空海が五大明王を安置する堂を建てたのが始まりで、後に皇室ゆかりの門跡寺院として発展してきました。そのため、嵯峨菊には、王朝の感覚が反映されており、優雅さと気品を兼ね備えています。
仕立ては七五三、つまり、下に7輪、真ん中に5輪、上に3輪を配する縦長の仕立てになっています。殿上から見やすいように縦長の仕立てにしたということらしいです。
花自体は花弁が管状に変化しているのが共通した特徴です。
京都府立植物園の四季彩の丘には、数品種の嵯峨菊が植栽されていました。京都府立植物園には、京都地方の野生植物や古典的な園芸植物を育て、京都の人々に展示し、また野生植物や園芸植物を保護するという役目があるようですので、この展示もその一環なのでしょう。
大覚寺とは違って、七五三仕立てにはなっておらず、普通に花を咲かせてあり、古典植物とは違った視点で花を見ているようで興味深いものでした。
嵯峨菊 右近の橘 京都府立植物園,2018 |
右近の橘
植物体全体は、このように育てられており、七五三仕立てではありません。
嵯峨菊 123番2 京都府立植物園、2018 |
ここから、黄色系の花
ラベルには、雅な名前のついたものと、識別数字のようなものがついたものの両方があります。雅な名前ですが、おそらく近年つけられた名前もあるのではではないかと思われます。
嵯峨菊 124-1 京都府立植物園、2018 |
124-1
嵯峨菊 右近 京都府立植物園、2018 |
右近
嵯峨菊 京舞妓 京都府立植物園、2018 |
嵯峨菊 御所の秋 京都府立植物園、2018 |
嵯峨菊 大沢の虹 京都府立植物園、2018 |
嵯峨菊 小倉錦 京都府立植物園、2018 |
育種者の雅な色彩感覚で選抜されたことを感じる花色です。
嵯峨菊 嵯峨の庵 京都府立植物園、2018 |
嵯峨の庵
この色も雅ですし、白へのグラデーションも風情があります。
一方で、現代的な感覚で見ても、洗練された美しさを感じます。
嵯峨菊は、古典園芸植物ではありますが、育てかたによっては、西洋的美的感覚にもアピールできるようにも感じました。
京都府立植物園には、今年夏の台風の傷跡がいたるところにあり、
大木が幹の途中で折れたり、中には、根本から倒壊したものもあります。草本も例外ではなく、葉や花が痛んでいました。少なくともこれまでの数十年間はほとんど無傷であったと思われる大木に被害が及んでいますので、相当な風速であったものと思われます。植物生態園では茎があちこちにねじれて、野菊の写真を撮ったのですが、そのラベルとおぼしきものを後で確認すると、そこに書かれていた種とは花色が違うとか、特徴が異なることが多くありました。これが自然というものだと思います。