ソニーのα7シリーズの新型機種がラスベガスで昨日発表されました。
プロモーションビデオの冒頭のキーワードは“The Basic Model”です。
しかし、α9とα7RIIIからのテクノロジーを惜しげなく導入し、とても強力なBasic Modelになっているように思います。
価格的には、APS-C機の最上位機種α6500との価格差がそれほど大きくなく、今後はFF主体の製品展開になっていくような雰囲気です。
α7、α7R、α7Sの第一世代機の開発経緯からすれば、RやSでない無印機が基本モデルであることは確かなのですが、この新製品を“The Basic Model”とわざわざ打ち出したのは、ソニー内部のそのような経緯とは別の意味、つまりレンズ交換カメラの市場に向けてのメッセージがあるように思います。
ソニーが主張する“Basic”とは:
1.
ミラーレス
2.
35mm フルフレーム
3.
2400万画素以上
4.
高速フォーカシング(AF速度、追従能力)
5.
充実した連写スペック(10コマ AE/AF追従;多い連写枚数)
6.
高度の手ぶれ補正(ボディー内機構が望ましい)
7.
ビデオ機能(4K(多画素全画素読み出しからの作成);高フレームレートHD;何らかのHDR機能(SonyではS-LogやHLG))
8.
大容量バッテリー
9.
低価格(フルフレーム機にしては)
などを具体的には示しているように思います。これは、ソニーが自社の製品に設定した“基本”ですが、一方では、他社の新製品の機能・性能を比較する際の基準ともなるのではないかとも考えられます。
かつて、35mmフィルムカメラでは、ライカM3やニコンF(システム)やキャノンが、それぞれの時代のカメラの性能の目安となっていました。これらの場合は、基準というより目標であり、多くのカメラはそれらの性能や仕様を目標に、自社技術や製品価格と折り合いをつけた新製品を出していました。
しかし、今回は、フラグシップモデルではなく、基本モデルを明示することで、他社の新製品は、これ以下の性能や、これ以上の価格の新製品を出しづらくなります。
コンパクトカメラはiPhoneなどの携帯付属のカメラに侵食されて衰退しました。日常の使用やメモ程度なら、iPhoneなどで全く問題のない写真を撮影できますし、4Kビデオも少し注意して撮影すれば、日常生活を切り取る道具としては全く問題がありません。むしろ、コンパクトカメラを持ってきていないが、携帯は持っている可能性が極めて高く、絶好の機会を逃がさない手段としては、iPhoneなどのほうが圧倒的に実用的です。
そのような携帯のカメラの勢いは、低価格ミラーレスにも及んでいます。そのような価格帯では、ファッション性を重視したり、インスタグラムなどの画像投稿に向けた性能や利便性を強調したりするなど、防衛線を築こうとしていますが、防衛に成功するかどうかわかりません。
その中で、Sony α7IIIが“The Basic Model”を設定したのは、この数年のカメラに関する歴史の中で、重要なターニングポイントになるように思います。
“基本モデル”というと、オプション(付加機能)のないもののように捉えがちですが、むしろ、「日常生活でのカメラの使用で、機能不足をほとんど感じさせることのないほど充実した仕様や性能を持つカメラ」が“The Basic Model”であるように感じます。
例えば、連写できることは、子供の遊ぶ姿を撮影するファミリーフォトでは必要な機能でしょう;しかしα9のように毎秒20枚は、そのような用途には過剰性能です。だからといって、毎秒3枚や5枚では、連写してもベストな写真を逃してしまうおそれがあります。毎秒10枚というのは、そのような用途に適した枚数のように思います。
今後発表すれであろう、NikonやCanonでは、高価格のフラグシップモデルは別として、普及価格帯のフルフレームミラーレスは、α7IIIと比較されることになります。攻防の妙手であるα7IIIに対して、なるほどと思わせる新製品を両社を始めとして、他社が出してくださることを楽しみにしています。
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