カンレンボクCamptotheca acuminate 京都府立植物園 |
たまたまカンレンボクという植物についてちょっとだけ調べる必要があり、京都府立植物園に実際に木があるということで、実物を確認しました。
カンレンボク(旱蓮木)Camptotheca acuminateはミズキ科もしくはヌマミズキ科の落葉高木で、中国雲南省原産です。(オオギリ科とする資料もあります)
生命力が強いこと、多くの種子をつけることから、中国では喜樹(キジュ)と名付けられることもあり(このことから、英語名の一つがHappy Tree)、街路樹や庭木として好んで植えられているようです。日本には大正時代に入ってきました。
夏に乳白色の花をボール状につけ、栗のいがやバナナの房が球状に集まったような果実を秋につけます。
この果実には、抗がん作用があることがわかっているカンプトテシンが含まれていることが、米国国立がん研究所の調査でわかり注目されました。ところが下痢などの副作用が強いことや、水に対して難溶性であることから、アメリカでのそれ以上の開発は中止になりました。
その分子構造を基本に、さらに日本で開発を続けたものが、抗がん剤のイリノテカンです。
京都府立植物園では正門(南側の入口)脇の駐車場にありました。駐車場の南側(府立大学のグラウンド側)に1本だけ駐車スペースにはみ出ている木があります。それがカンレンボクでした。思っていた以上に高木で、枝も高いところについていますので、花や種子は遠くからしか観察できませんが、果実は意外に大きく、直径が数センチメートルはあります。
漢方薬の成分を西洋医学の観点から分析し、有効成分を特定するという流れは、研究の方向性としては一つの妥当なことですが、だからと言って、有効成分だけを取り出して西洋医学の薬剤として使おうとすると、多くの場合、副作用の問題に直面します。おそらくそれは、直接有効成分となってはいない、他の成分が漢方薬の配合の中に含まれているからだと思います。
そもそも、病気に対する治療をある特定の化学物質に求めようとするのは、「西洋医学」の根本にある還元主義(Reductionism)の考えかたです。一方、漢方の考え方は、人間の状態を全体として理解し、その全体のバランスが崩れていることが病気であり、そのバランスをもとに戻すことが治療であるという、ホリズム(Holism)が基本です。
このReductionismとHolismの考え方の良いとこ取りができれば理想的なのかもしれません。
世の中の様々な論争では、批判する側は主張を先鋭化させようとしてReductionismの方向に論を進めようとする傾向が強いようです。そのような場合、実際には多面的な問題であるのに、自分が考えた見方だけが正しいと考えるようになりがちです。
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