いよいよ、インパクターによる人工クレーター作成実験が始まります。すでに、インパクト前の精密な写真撮影オペレーションはすでに開始されているようです。
本日、その記者説明会が開催され、YouTubeに掲載されました。
気になったのは、インパクトによって砕け散った岩石の破片は、その後どうなるかという点です。
砕石片の運命は、3つあります。
1. リュウグウの引力によってリュウグウに落下する。
2. リュウグウの引力を振り切って、リュウグウから離れていく。
3. リュウグウを周回する衛星になる。
3.の衛星になる確率は極めて低いと思います。本当に偶然が重ならないと実現困難と思います。
問題は、1と2の運命を分けるものは何かという点です。
その目安として有用なのが、脱出速度という概念です。これは、惑星や衛星から垂直に脱出するのに必要な速度のことです・
これを、リュウグウの大まかなパラメータ、
直径0.7 km(半径0.35 km)
質量450,000キロトン
で計算しますと、およそ0.41m/秒になります。
ですから、衝突で生じた砕石片は、垂直方向におよそ毎秒40cmを超える初速があれば、リュウグウから離れてしまうことになります。
斜め方向に飛び出した場合にどうなるかというのは、その鉛直成分だけで論じることはできず、難しい計算が必要になると思います。仮に、垂直方向の速度成分がゼロで、水平方向の初速がそれなりにあるとすると、水平方向に飛び出してしばらく経過すると、慣性運動を続けていっても、リュウグウから見ると、垂直成分が生じることになるからです。他にもモデルの状況と実際の状況とが異なる要素がありますので、そう簡単な計算で求められるものではないと思います。
一つの目安として、毎秒40cmという初速のオーダーが、砕石片がリュウグウに再び落下するか、リュウグウから永遠に離れていくかの分かれ目になります。