2016年4月20日水曜日

平成28年(2016年)熊本地震 4月20日

先のブログで、日奈久断層帯のうち、当初の活動は北東側の高野-白旗区間で」あったものが、南西の日奈久区間に及び始めたように見えることを書きました。

それから1日経過して、この区間での大きな地震があり、ニュース等でも日奈久区間への地震の波及が危惧されるようになりました。日奈久区間は、1600年ほど前の地震以降の活動歴がないようですが、一方で、高野-白旗区間とは異なり、横ずれ断層が明確に続いています。先日のマグニチュード5.5程度ではこの区間のエネルギーが開放されたとはとても言えないと思いますので、今後大きな地震(本震)が生じなければ良いがと思っています。

最近の地震活動を見ると、当初と比較して3つの点が異なってきています。
1.       布田川断層の日奈久断層高野-白旗区間の合流点よりも西側で活動が活発化している。
2.       日奈久断層帯日奈久区間での活動が本格的になってきた。
3.       北東側の大分県での地震が活発化した。
そして
4.       1530 kmの深部での地震が、表層部の地震活動の周囲に散発するようになった。

1については、地震活動の当初から、布田川断層の西側にあり、それまでの震源地とは遠かった宇土市の被害が大きかったことから、振動の地下での伝わりやすさが、断層に沿った方向とそうでない方向では異なることが予想されますので、そのことが休眠していた断層を刺激しやすくなったのでしょう。

4については、浅層での地震は、最近でも断層よりも北西側に限定され、南東部に発生することはごく稀ですが、1530 kmの深層での地震はそのような限定はなく、ぼやっとした広がりが特徴的です。

念のため申しておきますが、この1530 kmの深層はプレート地震ではありません。プレートはこの地域では、少なくとも地下150kmより深部に沈み込んでいます。

1530 kmの深さの地震が、断層とあまり明確な距離的関係なく散発的に活動していることは、何を意味するのは気になります。

ちなみに、今回の熊本地震の活動との関連で、京都大学西村准教授が興味深い説を発表しています。そのことが、43日のNHKスペシャル 巨大災害で紹介されました。
西村准教授は、GPSによる精密測地観測での移動の地域差と過去の地震記録を重ねあわせて、西日本がこれまで考えられていた1枚のプレートではなく、いくつかの小さなブロックに分かれていることを指摘し、今回の熊本地震の近傍にもブロックの境界が存在していると結論づけています。
従来の世界を十数個の大きなプレートと考えるのではなく、大まかにはそうであるとしても、一つのプレートの中(とりわけプレート境界の近く)は細かなブロックに分かれていて、それぞれが違った動きをしているというのは、カリフォルニアでも米国の研究者が指摘しているとのことで、海洋プレートの沈み込みに伴う陸側の動きを考える上でとても重要な考えであると思います。

熊本のブロックの境界が日奈久断層帯と正確に一致しているのかどうかは放送からはわかりませんでしたが、中央構造帯につづいていることからおそらく同じなのではないかと思います。

仮にそうだとすると(仮定に仮定を重ねていますから、慎重でなければなりませんが)今回の地震は、単なる表層の断層が再活動したのではなく、プレート・ブロックの大きな変動と考えるのが妥当なように思います。

このようなプレート内ブロックは、西日本だけでなく、日本全体に存在すると考えられますので、日本の断層について、ブロック境界の断層と境界とは関係のない局地的な断層に分けて考える、地震対策をする必要があることも示唆しています。

また、GPSによる精密測地がこのように、防災上極めて貴重なデータをもたらすものであるのなら、現在1基だけ打ち上げられている準天頂衛星「みちびき」を活用することで、GPS精密測地の精度や時間分解能が上昇するものなのかをきちんと評価してほしいと思います。仮に、時間分解能が大幅に向上して、1日、できたら1時間単位での地形の変化をリアルタイムに観察できるようになれば、地震直前のかすかな地形変化を捉えられることになるのではないでしょうか。
そのような展望が開けることがわかれば、常時どれかの衛星が天頂近くを通っておれるようにするため、さらに準天頂衛星を打ち上げることへの国民の理解が深まると思います。


2016年4月17日日曜日

平成28年(2016年)熊本地震

突然発生した熊本地震。被災された方々には心からお見舞いもうします。
阿蘇山からの2回の大きな火砕流の上に形成された熊本平野で、平時には湧水に恵まれた土地ですが、火砕流ゆえの地盤のもろさが今回は残念なほうに作用したのかも知れません。

九州大学地震研究所のホームページに、震源の過去24時間、1週間、1年間のデータが15分毎に更新されていて、活動の推移を観察するのにとても役立ちます。

本震とそれに引き続き大分県でも地震が発生した時点での、過去1週間(つまり、ほぼ今回の熊本地震の発生からの期間)を過去1年間と比較すると、とても興味深いことがわかります。



赤やオレンジ色の●で描いたものが熊本地震発生前の過去1年間の震央で、●の大きさはマグニチュードに比例しています。
一方、緑色や紫色の□で示したものが、415日午前815分以前の1週間(ほぼ熊本地震の期間)の震央です。これで見ると、今回の地震は、布田川断層帯と日奈久断層帯のうち、高野-白旗区間に当初は発生していたことがよくわかります。しかも、地震活動が比較的活発な中で、過去1年間にはあまり活動がなかった部分が今回の震央になっているように思います。
この図の過去1年間の活動は全てが●で示されており、過去1週間の活動は□で示されているのには理由があります。実は、□はコンピュータで震央を自動計算して示したもの(暫定結果)であり、●は手作業で確認した結果(確定結果)を示しています。過去1年間の震央マップには□が一つも記載されていませんので、過去1年間マップには確定結果しか示されていないことになり、今回の地震はまだ、手作業による確認が済んでいないため、過去1年間マップは今回の熊本地震より前の地震、過去1週間のマップが今回の群発地震とうまく切り分けられるのだと思います。

これに対して、阿蘇山や大分県に今回発生した地震は、過去1年間に震央のあった部分に重なっています。ということは、布田川断層日奈久断層帯高野-白旗区間)の地震からの刺激を受けたかもしれないが、阿蘇山や大分県の地震はすでに活動している場所の活動が増加したものと考えられます。震源地が次第に東進しているような印象が持たれて、次は中央構造線を辿って豊後水道、四国と不安になりがちですが、そのように結論づけるのはまだ早計でしょう。

それより心配なのは、最近の地震が、布田川断層帯の当初より西側(海に近いほう)、日奈久断層の高野-白旗区間を越えてさらに南西側(日奈久区間)にまで及んでいるように見えることです。
特に日奈久断層で高野-白旗区間を超えていることは日奈久区間のほうが高野-白旗区間より長く、横ずれ断層が連続して続いているので、この区間で更なる大きな地震とならなければ良いがと懸念しています。
高野-白旗区間に限定されていたら成り立つかもしれない、いろいろな推論の見直しが必要になるのでしょう。

この断層帯についてのまとまった情報は
布田川断層帯・日奈久断層帯の評価(一部改訂)
にあります。

東京大学地震研究所にも解説がありますので合わせてとても有用です。

また、だいち2号による地形変動の干渉解析の結果は
に出ています。20141114日と2016415日の比較です。
ひょっとしたら、変位の激しい2つのスポットのうち北東側のほうが何らかの地形(段丘など)と一致しているかも知れませんし、またその南東縁(変位の変化が急激な部分)は、家屋倒壊が激しかった地区に対応するのかも知れません。

自分の居住地の近くに活断層があるかどうかは、国土地理院の
都市圏活断層図
もっと具体的に、
九州地区については
に記載してあります。
拡大すると詳しく確認できるとても貴重な情報です。

同じ九州出身の私としては、熊本県の皆様の忍耐強さを感じていました。被災された方々が、そのような素晴らしい県民性を発揮されて難局を乗り越えられると信じております。

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