先のブログで、日奈久断層帯のうち、当初の活動は北東側の高野-白旗区間で」あったものが、南西の日奈久区間に及び始めたように見えることを書きました。
それから1日経過して、この区間での大きな地震があり、ニュース等でも日奈久区間への地震の波及が危惧されるようになりました。日奈久区間は、1600年ほど前の地震以降の活動歴がないようですが、一方で、高野-白旗区間とは異なり、横ずれ断層が明確に続いています。先日のマグニチュード5.5程度ではこの区間のエネルギーが開放されたとはとても言えないと思いますので、今後大きな地震(本震)が生じなければ良いがと思っています。
最近の地震活動を見ると、当初と比較して3つの点が異なってきています。
1.
布田川断層の日奈久断層高野-白旗区間の合流点よりも西側で活動が活発化している。
2.
日奈久断層帯日奈久区間での活動が本格的になってきた。
3.
北東側の大分県での地震が活発化した。
そして
そして
4.
15〜30
kmの深部での地震が、表層部の地震活動の周囲に散発するようになった。
1については、地震活動の当初から、布田川断層の西側にあり、それまでの震源地とは遠かった宇土市の被害が大きかったことから、振動の地下での伝わりやすさが、断層に沿った方向とそうでない方向では異なることが予想されますので、そのことが休眠していた断層を刺激しやすくなったのでしょう。
4については、浅層での地震は、最近でも断層よりも北西側に限定され、南東部に発生することはごく稀ですが、15〜30 kmの深層での地震はそのような限定はなく、ぼやっとした広がりが特徴的です。
念のため申しておきますが、この15〜30
kmの深層はプレート地震ではありません。プレートはこの地域では、少なくとも地下150kmより深部に沈み込んでいます。
15〜30 kmの深さの地震が、断層とあまり明確な距離的関係なく散発的に活動していることは、何を意味するのは気になります。
ちなみに、今回の熊本地震の活動との関連で、京都大学の西村准教授が興味深い説を発表しています。そのことが、4月3日のNHKスペシャル 巨大災害で紹介されました。
西村准教授は、GPSによる精密測地観測での移動の地域差と過去の地震記録を重ねあわせて、西日本がこれまで考えられていた1枚のプレートではなく、いくつかの小さなブロックに分かれていることを指摘し、今回の熊本地震の近傍にもブロックの境界が存在していると結論づけています。
従来の世界を十数個の大きなプレートと考えるのではなく、大まかにはそうであるとしても、一つのプレートの中(とりわけプレート境界の近く)は細かなブロックに分かれていて、それぞれが違った動きをしているというのは、カリフォルニアでも米国の研究者が指摘しているとのことで、海洋プレートの沈み込みに伴う陸側の動きを考える上でとても重要な考えであると思います。
熊本のブロックの境界が日奈久断層帯と正確に一致しているのかどうかは放送からはわかりませんでしたが、中央構造帯につづいていることからおそらく同じなのではないかと思います。
仮にそうだとすると(仮定に仮定を重ねていますから、慎重でなければなりませんが)今回の地震は、単なる表層の断層が再活動したのではなく、プレート・ブロックの大きな変動と考えるのが妥当なように思います。
このようなプレート内ブロックは、西日本だけでなく、日本全体に存在すると考えられますので、日本の断層について、ブロック境界の断層と境界とは関係のない局地的な断層に分けて考える、地震対策をする必要があることも示唆しています。
また、GPSによる精密測地がこのように、防災上極めて貴重なデータをもたらすものであるのなら、現在1基だけ打ち上げられている準天頂衛星「みちびき」を活用することで、GPS精密測地の精度や時間分解能が上昇するものなのかをきちんと評価してほしいと思います。仮に、時間分解能が大幅に向上して、1日、できたら1時間単位での地形の変化をリアルタイムに観察できるようになれば、地震直前のかすかな地形変化を捉えられることになるのではないでしょうか。
そのような展望が開けることがわかれば、常時どれかの衛星が天頂近くを通っておれるようにするため、さらに準天頂衛星を打ち上げることへの国民の理解が深まると思います。
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