2017年4月24日月曜日

奈良 猿沢池のカワウ

奈良の猿沢池には、様々な鳥たちが訪問します。カワウもその中に含まれています。ただ、奈良公園内の鳥の種類に関する奈良県の2009年の報告には、カワウが項目として含まれていませんので、それ以降に訪問し始めたのかもしれません。

ここでは、全国内水面漁業組合連合会が長岡科学技術大学 山本先生に執筆していただいた平成203月の報告書
「カワウってどんな鳥?」
http://www.naisuimen.or.jp/jigyou/kawau/01-1.pdf
を参考にしてまとめてみます。

私が目撃した範囲では、カワウは1頭か2頭です。

写真は、4K24Pビデオからの切り出しです。たまたま、Sony AマウントのSTFレンズ、135 mm F2.8 [T4.5]をα6500に装着して、Super 35 mm相当で撮影しましたので、フルフレーム200 mm換算の映像からの一部切り出しになります。


池の中央に水面ぎりぎりの岩が2箇所あり、そのいずれかに陣取って、羽根を拡げるのが普段の状態です。潜水に有利なように、羽毛の脂分が他の水鳥よりも少なく、そのため、羽毛を乾かすのに翼を拡げて小刻みに震わせる必要があるためだそうです。

私が特に興味を持ったのは、飛び立つ際に、一直線に飛び去るのではなく、猿沢池の周囲を何度か旋回して池から離れていくように見えたことです。

まずは、離水開始の部分

カワウは両脚を揃えて跳躍動作をしながら離水して行きます。何箇所かある水しぶきの高いところが、脚を伸ばした場所に相当します。両脚を揃えていることは、右端のカワウの姿勢からもわかります。

この後、カワウは左旋回して、池全体を使って飛んでいきます。



ボケボケなのですが、左の赤枠内にカワウがおり、ピンクの赤枠が出発点です。この写真でわかるのは、猿沢池をほぼ半周したのに、カワウの高度が、興福寺側の道路の高さにも達していないことです。

ずいぶん緩い上昇率なので、周囲に旅館や結構式場、松の木などがある猿沢の池では、池から離れるまでの高度を稼ぐために、何周か池の周囲を回らなければならないのでしょう。私が目撃した際には、2周して飛び去りました。

飛び去った方向は、いつも決まっていて、西方向、天平ホテルの南側(南西方向)か、天平ホテルの北側の采女神社の真上から三条通の方向(西方向)のいずれかでした。いずれの場合も、高度は、天平ホテルの最上部には届いていませんでした。

南西方向に飛び去ったのは夕方で、西方向に去ったのはこの写真(ビデオ)の日の休日のお昼前でしたので、南西方向のコースはねぐらに帰るコース、西方向は別の餌場への移動だったのかもしれません。東京での1日の行動圏は、直径1090kmという実測結果があり、ほぼ決まった餌場があるようですので何箇所かの餌場を巡ってねぐらに帰るという生活をしているのでしょう。
体重3 kg前後のオスと2kgをちょっと超える程度のメスですが、体温保持や飛翔に多くのエネルギーを使いますので、育雛期以外の1日に必要な餌の獲得量は500 gを超える程度(体重の1/4くらい?)、育雛期期にはさらに多く1kg程度の餌を必要とするようです。猿沢池で毎日500 gの魚を捕獲できるのは無理かもしれません。複数の餌場でまかなっているのでしょう。

では、ねぐらはどこかというと、奈良県で唯一確認されているのは、橿原神宮の中にある池だそうです。奈良市からみて橿原市は、南〜南南西にあたりますので、コースとしては、まあ考えられる方向です。もっとも、鳥には県境は関係ありませんので、奈良県内の営巣地ではない可能性もあります。

調査研究の多くが、内水面漁業との関係で行われているようで、12頭のカワウではない多数のカワウによる漁業被害や糞の問題などがあるという視点も重要なのでしょう。

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