小椋の大黒 2015年6月 京都府立植物園 |
奈良国立博物館で開催されている「特別展 快慶」は後半になって展示物の入れ替えがあり、特に最後の展示室(第7章 安阿弥陀様の追求)に新たに2体が加わり、様式の変遷を観察するのに充実しています。
今回の観覧では、立像の基部に注目しました。
阿弥陀如来立像はそもそも、善良者が往生する際に、阿弥陀如来が紫雲に乗り、観音菩薩と勢至菩薩を従えて往生者を迎えに来るという来迎の場面をもとにしたものです。3者とも蓮台に載っています。
ですから、阿弥陀如来立像の基部には、蓮台と紫雲の両方が表現されるはずで、実際、蓮台はどの立像にもあり、紫雲は一部の阿弥陀如来立像にあります。
この紫雲の造形はとても興味深いもので、いずれの紫雲もその後部が立ち上がっています。これは、阿弥陀如来と蓮台が下降しているため、移動方向と逆の位置で紫雲が湧き上がるというダイナミックな様子を表したものと思います。
つまり、阿弥陀如来は静かに立っておられる(静的状態)のではなく、来迎の移動中(動的状態)なのでしょう。
この動的状態という阿弥陀如来立像の見方に関連して発見したもう一つの点が、足の位置です。快慶作だけでなく、ほとんどの阿弥陀如来立像が左足をほんのすこし前に出しておられます。歩いているというほどではないのですが、このわずかな非対称が、往生者に接近するその瞬間をよりダイナミックに表現しているように思います。
ちなみに、地蔵菩薩立像は、この特別展で確認できた限りでは左足ではなく右足を出しており、藤田美術館蔵の地蔵菩薩立像(展示品目79番)では、その足の左右非対称が、脚部では、その左右のずれが着衣にも現れています。
花托 |
蓮台については、実際の蓮の花弁と花托、蕊の特徴が蓮台の造形の中にシンボリックに表象されていると感じたのですが、一つだけ気になったことは、花托部分が円形ではなく、左右の足の間(つまり立像の正面、前縁)に切れ込みが入っている像が多数あったことです。一般に花芽形成の際の刺激によって、2つの花が部分的に融合したものは時々見かけますが、蓮の花でそのような変形した花托を見たことはありません。
その解釈として2つ考えられると思います。
第一に、他の立像で、岩の上に立っている神将像などでは、左右の足の接地面が分けて表現されており、そのような基本的なモチーフに蓮の花をマッピングしたので、花托にくぼみが残ったというもの。
第二に、赤蓮と白蓮は、宗教のコスモロジー的には異なるものであり、その2つの蓮が融合して蓮台となったというもの。
他にも考えられるでしょう。