2019年4月5日金曜日

クラシック音楽 関係者に最適のPCMレコーダー Sony PCM-A10


クラシック音楽の演奏家や音楽学に関係している人々にとって、昨年発売されたソニーのPCMレコーダーPCM-A10は、手軽に使えて、便利であり、音質もそこそこ良いという点で、検討してみる価値のあるレコーダーです。

そのことを、
1.録音
2. 音楽再生
3. ワイヤレスヘッドホン(イヤホン)の利用

3つの観点から説明します。

1.録音 (リハーサルの録音
1.1 コンパクトさ
PCM-A10は重さが82g、サイズがおよそ40×110×16 mmと極めてコンパクト、軽量でありながら、最高規格で96 KHz/24ビットの録音が可能です。
これで、ステレオマイクがついていますので、このレコーダーさえあれば、リハーサルの録音をすることが可能です。バッテリーの持ちも、23時間のリハーサルはもちろん、半日以上かかるようなゲネプロでも規格上は問題ありません。

1.2 録音レベルの設定(リハーサル機能)
でも、クラシック演奏の録音では、手軽さの他に、録音レベルがうまく設定できておらず、再生してみると音がわれたり、小さすぎたりするという、問題を抱えていました。それを、PCM-A10では、「リハーサル機能」である程度解決しました。それは、演奏の中で、フォルテシモの部分の演奏を試しに行って、その際に、リハーサルボタンを押します。そうすると、レコーダーが自動的に録音レベルの調整を行って、レベルオーバーにならない範囲で、録音レベルをできるだけ高めに設定してくれます。
後は、そのマニュアル音量設定のまま、録音をすればほぼ最適な録音になります。

実は、これには、もう一つの便利な使い方があるのです。それが、Rec Remoteというソニーが提供しているAndroid/iPhoneのアプリを使って、リハーサル操作を行う方法です。

1.3  Rec Remoteアプリ(手軽にリモート操作)
Rec Remoteアプリでは、録音の各種設定(サンプル周波数やビット数の設定、圧縮モードの設定;録音開始、ポーズ、停止)がとても手軽にできる上に、録音レベルを確認したり、コントロールしたりすることができます。
そして、先程説明しましたリハーサル機能が、このアプリでは、グラフィカルに確認できるのです。Rec Remoteアプリでリハーサル機能を使いますと、録音レベルがスクロールしていきますが、レベルオーバーになると、その部分が赤い色に変化して、録音レベルを自動的に下げて行きます。どの録音レベルに設定されたかも、画面に表示されますので、リハーサルの音量よりも、本番でもう少し大きな音量になる可能性があれば、リハーサル機能を止めた後に、録音レベルを何段階か下げておくことが可能です。
それから、Bluetoothが届く範囲でレコーダー本体とスマホを離しておいても動作しますので、レコーダーは、少し離れた位置においておき、録音操作は演奏する場所で行うことが可能です。

なお、リハーサル機能を使うのもめんどくさい、もっと手軽な録音でもよい。確実に録音されていることのほうが大切なのであれば、
オート録音も可能です。オート録音はスピーチ録音用としてありますが、演奏を確認できれば良い程度であれば、音楽をオート録音してもそれほど音質が悪くなることはありません。Rec Remoteアプリを使えば、リハーサル機能を使ったマニュアル設定と、オート録音の切り替えがとても簡単にできますので、うまく使い分けると良いでしょう。

1.4 ファイルの転送
録音したファイルは、USBを介してPCに極めて簡単に転送できます。標準的なファイル形式ですので、利便性に問題はありません。



2. 音楽再生(CDリッピング、ハイ・リゾリューションの再生)
ソニーでは、一つ前の世代のPCMレコーダー PCM-D100から、録音した音だけでなく、CDをリッピングした素材、さらにはハイ・リゾリューションで市販されている音素材を再生できる機能を備えています。
圧縮したmp3素材はもちろんのこと、AACWAV形式、さらにはロスレス圧縮法でよく使われるFLAC形式の音源が、なんと最高192 KHz/24ビットまでPCから転送して再生可能です。もっとも、192 KHz/24ビットは96 KHz/24ビットまでダウンスケーリングされた上での再生となります。そうは言っても192 KHz/24ビットの曲を購入した場合でも、そのまま転送するだけで再生可能であることはとても便利です。

ここで、ハイレゾ音源は、Windowsでしか使えず、Macユーザーには関係ないものという先入観をもたれておられるかたには、朗報を!
Macでも96 KHz/24ビットのハイレゾ音源が再生できますe-Onkyoなどで、ハイレゾ音源をFLAC形式で購入すると、MacQuick LookQuicktimeプレーヤーでそのまま再生できます(ここでも192 KHz/24ビットであっても96 KHz/24ビットまでダウンスケーリングされますが、再生可能です)。
問題は、iTunesなのです。MacOSiTunesは、FLAC形式を受け付けません。
その問題の解決策として、FLACファイルをAppleLossLess形式にフリーソフトを使って変換する方法があります。FLACファイルもAppleLossLessファイルも、いずれも可逆的圧縮法ですので、mp3とは異なり、情報が失われることは理論上ありません。96 KHz/24ビットのFLACファイルは96 KHz/24ビットのAppleLossLessファイルに双方向に変換できます。そして、その96 KHz/24ビットのAppleLossLessファイルは、iTunesにそのまま登録できます。登録されたファイルの再生で、96 KHz/24ビットのAppleLossLessファイルは、CDリッピングしたファイルとシームレスに活用可能です。
ちなみに、192 KHz/24ビットのFLACファイルは、96 KHz/24ビットのAppleLossLessファイルに変換されますので、これも問題ありません。

ただし、iPhoneなどのiOS系のiTunesには、ハイレゾのファイルは転送できないようです。

3. ワイヤレスヘッドホン(イヤホン)の利用
PCM-A10は、Bluetoothで接続した、ヘッドホンやイヤホン、スピーカーで録音した素材やミュージック素材を再生させることができます。
ハイレゾ素材も再生できますが、CDレベル未満の音質になります。だいたいビットレートの高いmp3素材程度の音質と考えれば良いでしょう。でも、本格的なリスニングではなく、確認用に手軽に素材を持ち出して聴きたい場合には、十分なレベルの音質です。それよりも、環境ノイズの問題のほうが大きくて、出先で確認すること自体が不可能という反論もあるでしょう。

そこで、ノイズキャンセリング・ヘッドフォンの活用です。ノイズキャンセリング・ヘッドフォンは性能が驚くほど進化しています。これについては、別に稿を改めます。

4. 問題点
魅力的なPCM-A10ですが、問題点もあります。96 KHz/24ビットまでで録音再生できるとは言っても、実際にその規格の性能を遺憾なく発揮しているかというと、そうではありません。同じソニーのPCMレコーダーのPCM-D100や一つ前の世代のPCM-D50と比較すると、録音の品質はそれなりです。しかし、それなりとは言ってもそこそこに良い音質で録音できることは間違いありません。普段遣いができるPCM-A10でも、かなりの音質で録音できるとなると、応用範囲がかなり拡がります。PCM-A10の音質の問題のかなりの部分が内蔵マイクの性能に帰着するように思います。PCM-D100の内蔵マイクの音質に比べると明確に劣っていますし、ステレオ感も、PCM-D100は言うまでもなくPCM-D50よりもありません。この問題はワイドステレオポジションにマイクを設定することで、少しは改善されるようです。

再生については、PCM-A10のヘッドフォン出力は、インピーダンスの高い高音質とされているヘッドフォンやイヤホンを鳴らすには、ちょっと非力です。
推奨インピーダンスは16-32オームとされており、300オームもある、ゼンハイザーHD 650では非力さをまざまざと味わうことになります。
ワイヤレスヘッドホンとの接続でも、基本モードのSBCモードしか対応しておらず、ハイレゾモードには対応していません。

しかし、録音にしても再生にしても、そこまで気にするのなら、PCM-D100PCM-D10の本格機を使えば良いのであって、その場合でもPCM-A10はサブ機として便利に使うことが可能です。なにせ、2万円以内で購入できて、重さはわずか80グラム、胸ポケットに簡単に収まる大きさで、スマホからの遠隔操作も可能、工夫すればWalkmanの代役(ミュージック再生機能)も可能とあれば、その便利さには代えがたいものがあるとわかるでしょう。


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