2014年12月31日水曜日

Too many notes! ウィーン古典派オペラ考 Part 2

マルティン・イ・ソレール(1754 – 1806)
スペインのバレンシア生まれ。イタリアに留学し、主に舞台音楽(歌劇やバレエ音楽)を作曲しました。1785年にはウィーンに移り、ダ・ポンテの台本に作曲した以下の3つの作品
椿事(ちんじ)Una cosa rara(ウナ・コーサ・ララ)(1786)
ぶっきらぼうな善人 Il burbero di buon cuore (1786)
ディアナの樹 L'arbore di Diana (1787)
がウィーンで大成功を収め、一躍国際的にも有名となりました。
1788年にロシア宮廷に招かれ、そこで作曲活動を続けましたが、1806年にサンクトペテルブルグで死去しました。

ウィーン時代(1785-1788)が彼の作曲家としてのピークであり、それはまた、モーツァルトのオペラ作曲家としてのピークとも重なります。

椿事 Una cosa rara(ウナ・コーサ・ララ
【成立事情】
2幕の作品。デ・ゲバラの戯作をもとにダ・ポンテが台本を作成し、17861117日にブルク劇場で初演されました。同年51日に初演されたモーツァルトの「フィガロの結婚」は10回に至らずに取りやめになりましたが、この作品は熱狂的に受け入れられ、連日満員だったようです。
初演の際にヨーゼフ2世は、フィナーレに近い曲であるデュエット"Pace, Caro Mio Sposo”のアンコールを所望し、その後しばらくは、街中でこの曲を口ずさむ人が現れたり、登場人物の服装がファッションとして流行したりしました。

あらすじを一言で言えば、いかのようになります:
15世紀スペイン。スペインの王子ドン・ジョヴァンニが貞淑な女性リラを誘惑しようとする。リラはルビーノと婚約しているため拒絶する。女王(ドン・ジョヴァンニの母)が事情を知り、リラは愛するルビーノと結婚できた。

ここで、ドン・ジョヴァンニは、モーツァルトのドン・ジョヴァンニと同一人物ではありませんが、いわゆる「ドン・ファン」伝説という点では、共通する戯作の特徴的なキャラクターなのでしょう。

この作品が人気になったことは、モーツァルトも認めていまして、モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」では第二幕のフィナーレの直前に、ドン・ジョヴァンニとレポレッロが晩餐会の準備をしている場面に、このUna cosa raraが登場します。

楽師たちは、3つの曲を演奏します。その最初に出てくるのが、ソレールのオペラ「椿事 Una cosa rara」の第1幕のフィナーレ“O Quanto Un Si Bel Giubilo”です。メロディーが聴こえ始めますと、レポレッロが「cosa rara」と曲名を示しています。

聴衆の記憶にあることを前提に、この作品を引用していることになります。Una cosa raraの楽譜を見たのか、モーツァルトの天才的な聴音の才能であったのかは不明ですが、小アンサンブルに編曲はされているものの、原曲がかなり長い小節にわたって再現されています。



Part 3では、この作品の音楽上の特徴を探っていきます。

0 件のコメント:

コメントを投稿

SonyノイズキャンセリングヘッドホンWH-1000XM4のトンネルボコッ大幅改善

 SonyノイズキャンセリングヘッドホンWH-1000XM4では、新幹線でのトンネル出入りの際のボコッが、WH-1000XM3と比較して大幅に減少しているようです。 山陽新幹線・九州新幹線ではトンネルが多いため、高速でトンネルに入ったり出たりすると、車内の気圧が急激に変動するため...