2015年8月16日日曜日

レ・シャンドール 位置皿に込められた意味

京都の正統派フレンチレストランとして有名なレ・シャンドール。

錦小路から少しそれて、柳の馬場通りと蛸薬師通の交差点を北上すると到着します。こじんまりとしたウェイティングルームからドア一つ中に入ると、清潔な感じのダイニングルームになります。外界の様子がわかる窓はなく、食事に集中できる空間です。

テーブルには位置皿とカトラリーがセットされています。この位置皿、その中心にメディチ家の紋章とおぼしきものがあしらわれています。フランス料理なのにイタリアの紋章と不思議に思ってお聞きしましたら、メディチ家からフランス王家に嫁いだカトリーヌ・ド・メディシス1519-1589)にちなんだものであるとのことでした。
1533年にカトリーヌがフランソワ1世と結婚した際に、洗練されたフィレンツェの料理文化をフランスに導入したのが、現代にまでつながるフランス料理のルーツです。

つまり、このレストランでは、フランス料理の原点まで見通した料理を田島シェフが目指しておられることを、一枚の位置皿で私たちに伝えておられるのです。

お能で言えば、ワキ方が登場して冒頭に背景説明をするようなものです。観客はその短い説明から、その後に展開されるドラマの世界に入り込むことができますし、一方では、そのことで空間にイメージを構築できる文化的素養が観客の側に求められます。

アミューズの人参のムースに始まり、ヨーグルトを使ったスープ仕立てのデザートに至るまで本当に素晴らしいものでした。

それぞれの素材がよく吟味されているのはもとより、素材の味を活かすというよりは、組み合わせられて生じるお味を楽しむことが、よりふさわしい食べ方のように感じました。

オードブルの1品のズワイガニのミルフィーユ仕立てではズワイガニ、スナップエンドウ、アボカド、グレープフルーツでミルフィーユが作られ、その上に鱒の卵が配されています。想像していたよりはずっと柔らかいミルフィーユでした。その4種の食材がそれぞれ独立した味を主張するのではなく4つの味のマリアージュで、一つのまとまった爽やかな味わいを楽しめるのです。
カニの味だけを求めると、ちょっと物足りないという印象が出るのかも知れませんが、この料理で意図しているのは、そのような個別の味を楽しむものではないように感じました。

同じくオードブルの
フォアグラのテリーヌ(いちじくを挟んだ)や
オマールエビを使ったラビオリ仕立て(ラタトゥイユを挟んだラビオリの上に配される)
についても同じように、素材ではなく組み合わせの味が追求されていました。

デザートは、ヨーグルトを使ったスープ仕立てのデザート
ぶどうとコンポートにした桃を沈めてあり、真ん中にミントと白ワインを使ったシャーベット、さらに隣にいちごのシャーベットが配されています。

食器の組み合わせも含めて素晴らしいものでしたので許可をいただいて写真を撮りました。エスプレッソのカップはジノリでしたが、この写真のお皿は日本製で、ブランドではなく本当に優れた眼で食器を選び、組み合わせておられるのがわかります。

ヨーグルトを使ったスープ仕立てのデザート
許可を得て撮影
 実際の食事時間が1時間半程度、前後を含めると1時間40分ほどかかりましたので、時間に余裕をもったほうが良いと思います。

室内はあまり自己主張しない絵(リトグラフ?)が4枚がありますが、色彩的な中心はフラワーアレンジメントで、その対壁面に大きな鏡があり、アレンジメントを写しています。
お盆を意識した蓮やほうずき、かぼちゃのアレンジメント
許可を得て撮影(いずれもiPhone)

音楽は、この時には、シューベルトの冬の旅やメンデルスゾーン「真夏の夜の夢」の結婚行進曲などの小品のフルートによるアレンジメントで、注意して聴くと聴き取れる一方で意識から外して会話に集中もできる程度の音量でした。

70分程度で反復されるようです。

実は、東京銀座のあるレストランで、お料理や雰囲気はとても素晴らしかったのですが、音楽が、よく知っていた曲で、もともと1回繰り返しが原曲にあるのです、それを何度も何度もループされて、少し閉口したことがありました。

レ・シャンドールではそのようなことはありませんでした。


最後に、田島 福廣シェフにご挨拶できまして大変光栄な1日でした。



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