先月、レンズ設計者による一般向けのセミナーでSony FE 90 mm F2.8 Macroレンズの設計や構造上の特徴について解説がありました。
レンズの構成図については以下をごらんください:
MTF曲線で、周辺部まで高いコントラストを有しているのがこのレンズの特長ですが、これは2つのフォーカスグループを使って、それぞれが中心部と周辺部のフォーカスを最適になるように動かしていることによるものとのことでした。
レンズ構成図で言えば、
真ん中の1群2枚の貼りあわせレンズは、手ブレ防止レンズで、
その前と後の小さいレンズ群が2つのフォーカス群になります。
この2つのフォーカスグループの動きを2つのダイレクトドライブSSMがそれぞれ個別にコントロールしていることになります。
なぜ2つのフォーカスグループが必要になるかというと、レンズ設計上フォーカスを含む収差の補正は、1つの収差を1つのレンズ(群)が補正することなるため、中心部の収差(フォーカス)の補正と周辺部の収差(フォーカス)の補正をそれぞれ別々に担当させる必要があるからとのことでした。
この2つのフォーカスグループの動きを、カム溝を使わずにダイレクトドライブSSMで直接制御しているため、素早いフォーカシングができることはもちろん、それぞれの製品のレンズ製造上に生じる個体差に合わせて2つのフォーカスグループの位置を最も良好なフォーカスになるようにチューニングすることが可能になります。
つまり、組み上がったレンズについて、何段階かの焦点距離で合焦させ、その時の2つのフォーカスグループの位置を記憶しておいて、そこからそれぞれのレンズ個体の2つのフォーカスグループの動きを制御する推移曲線を決め、それをROMに記憶させる方式と推定しています。
カム溝を使ったものでは、そのような微調整はできません。
「製造工程では1本1本調整することで…」とカタログに書いてある背景には、このようなことが行われているようです。
ですから
例えば同じ1メートルの被写体に合焦させる際に、Aというレンズ個体とB個体では、フォーカシングレンズの位置が微妙に異なることになります。
まさに“Super Tuned Lens”とも言えるレンズです。
アンゲロニアはゴマノハグサ科の植物で、暑さに強く、丈夫な花とのことです。
遠くから見ると気がつかないのですが、花全体に産毛のようなものが生えていまして、
FE 90 mm F2.8 Macroレンズで撮影すると、フォーカスの合っている部分だけ鮮明に浮き彫りになり、不思議な雰囲気を醸し出します。
サワギキョウの花は変わった構造をしています。ただし、その成分ロベリンに呼吸興奮作用のある毒草です。
サワギキョウLobelia sessilifolia 有毒植物 |
スズムシバナ。密生した葉の間から花が出ていました。京都府絶滅危惧種。
スズムシバナStrobilanthes oligantha Miq.京都府絶滅危惧種 |
FE 90 mm F2.8 Macroレンズは、ボケの美しさを活かして色彩のコンポジションにも使えます。赤いハゲイトウを絞り開放で撮影すると、赤のトーンだけのコンポジションになりました。
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