2017年7月19日水曜日

お茶に適した水(軟水それとも硬水?)

緑茶というか日本茶は軟水で淹れて飲むと美味しい(うま味が多く、渋みが少ない)と従来は信じられていました。

ところが、これを覆す研究結果が得られたことを、その研究の著者の一人であられる
大森正司先生の近著(2017520日 初版第1刷)
   ブルーバックス
   お茶の科学
   「色・香り・味」を生み出す茶葉のひみつ
   (2017520日 初版第1刷)

に紹介しておられます。とても素晴らしい著作です。

ちなみにこの本は、日本茶だけでなく、ツバキ科のチャの茶葉を使った様々な「お茶」(日本茶、紅茶、ウーロン茶、黒茶など)を紹介してあます。
日本茶に限って言えば、これまで官能的評価をもとにした、様々な美味しい淹れ方の条件について、科学的なデータによる説明がなされています。
条件の多く(淹れる温度、蒸し時間など)は従来の“定説”を裏付けるものでしたが、一つだけ、
「淹れる水は軟水のほうが良い」という“定説”については否定的な結果がでています。

ただし、このような一致しない結果がでた場合には、実験条件の違いや評価方法について検討してみる必要があるというのが、科学論文を読む際の重要な点です。

そこで、原論文
茶の呈味におよぼす水質(特にCa)の影響と味認識装置による評価
内山裕美子 ら;日本調理科日学本会調誌理科学会誌,Vol.47 (2014)No. 6; pp. 320-325

を読んでみました。

結論から言えば、
静岡県の川根茶の深蒸し煎茶の一番茶を100℃で3分間蒸らして淹れれば」、味覚センサーを用いた科学的評価でも、三点比較法による官能検査(識別試験、嗜好試験)でもブルーバックスの213ページの図(原論文の図2)の結果が得られたことは妥当なように思われます。
この図の解釈は、「(著者らの設定した方法で淹れた)煎茶のうま味は、硬度約300のエビアンで淹れた場合に最も高い」ということになります。

気にかかることは
静岡県の川根茶の深蒸し煎茶の一番茶を100℃で3分間蒸らして淹れれば
の条件で、日本茶(緑茶)全てを代表するものとして良いのかという点です。
実験条件をその研究でも、また関連研究との間でもできるだけ統一したいことから、このような実験条件を定めるのは稀なことではありません。

しかし、茶葉の成分が比較的出やすいとされる「深蒸し煎茶」を、一般に煎茶を淹れる温度とされる80ではなく100で淹れて、蒸らし時間は煎茶の場合2間が最適とされる(同じ研究グループがその客観的データを示している;ブルーバックス181ページ)のに、3間蒸らしているという条件が、「結果を煎茶全般、あるいは玉露を含めた日本茶全般まで一般化できるか」というと、少し無理があるように思います。

このブルーバックスの本はとても意義深い貴重なデータや資料が含まれており、お茶に興味のある方には、重要な情報源となると思います。

とりわけ、日本の「黒茶」(石鎚番茶、阿波番茶、碁石茶、富山黒茶)の情報については、一般書でここまで詳しく記述されたものを私は知りません(私の主観的な印象です)。

常々、水を硬度という単一の評価尺度で表現して、様々な味覚との関係を評価するのにはなんとなく抵抗を感じています。

それは、硬度が何か単一の成分によって決まるのではなく、
カルシウム塩・マグネシウム塩の量を炭酸カルシウム (CaCO3) の量に換算するアメリカ硬度によって求められるからです。

   硬度(mg/L)Ca(mg/L)×2.497 Mg(mg/L)×4.118

この式は、つまるところマグネシウム濃度をカルシウム濃度に換算して単一の尺度にしていることになります。
つまり、硬度が仮に100であっても、その硬度の水のカルシウム塩とマグネシウム塩の組み合わせは、無数にあることを意味しています。

手元にある「エビアン」の栄養成分表を見てみますと、硬度304 mg/LpH7.2100 mLあたりのカルシウムが8.0 mg、マグネシウムは2.6 mgです。カルシウムとマグネシウムの重量比はおよそ4:1〜3:1ということになります。

一方、「四万十川源流の天然水」では
硬度約33.4 mg/LpH7.5、カルシウム1.14mg、マグネシウム0.12mgで、カルシウムとマグネシウムの重量比はおよそ101ということになります。

絶対値が違いますので、硬度には約9倍の開きが当然ありますが、カルシウムとマグネシウムの含量比にもこのように大きな違いがあります。

その他、硬度の算定に含まれないナトリウムやカリウムが、水そのものの味覚には影響を及ぼさなくてもお茶の成分抽出に影響を及ぼす可能性も否定できないと思います。

大森正司先生の指摘された結果は、
「日本茶を淹れるのは軟水が最も良い」という“定説”について一度立ち止まって考えさせることを求めたという意味では大変意義深いもので、その研究の実験条件では、そのような結果が得られたことは妥当なように思います。

エヴィアンという全国どこでも比較的入手が容易な水を使った結果ですので、各自の条件(茶葉の種類、淹れる温度、蒸らし時間など)で容易に試してみることが可能です。


2017年7月14日金曜日

Sony αシリーズのアクセサリーキットNPA-MQZ1K

Sony α9の発売に合わせて、いくつかアクセサリーが発売になりました。
α9は高嶺の花ですので、私には関係ないものと思っていましたが、1つだけ注目するものがありました。

アクセサリーキットNPA-MQZ1Kです。

これは、現時点ではα9のみが使える高容量バッテリーNP-FZ100を最大4個装着でき、長時間撮影が可能なものです。

アクセサリー本体に最大4個のNP-FZ100を装着し、それらの急速充電が可能で、4個同時充電器としての機能を果たしますが、それに加えて撮影の際には、α9本体のバッテリーを外して代わりに接続プレート(バッテリーと同じ形状)をカメラに装着し、電源供給することが可能です。

そして、この接続プレートにからくりが仕組んであります。一部が分解できるようになっており、その部分を外すと、形状がNP-FW50と同じになり、α7、α6000、α5000DSC-RC-10シリーズにも挿入できるという優れものです。


希望小売価格は42000円(税別)と高いのですが、この価格には、NP-FZ1002個含まれています。NP-FZ100の希望小売価格が1個で9000円(税別)ですので、アクセサリー本体の価格は24000円相当ということになります。長時間インターバル撮影や本格的なリグを組んだムービー撮影用途にはα7やα6000シリーズにも十分意義のあるアクセサリーと思います。

SonyノイズキャンセリングヘッドホンWH-1000XM4のトンネルボコッ大幅改善

 SonyノイズキャンセリングヘッドホンWH-1000XM4では、新幹線でのトンネル出入りの際のボコッが、WH-1000XM3と比較して大幅に減少しているようです。 山陽新幹線・九州新幹線ではトンネルが多いため、高速でトンネルに入ったり出たりすると、車内の気圧が急激に変動するため...