7月7日(七夕)のnewswitch(多分日刊工業新聞)に、ニコンの牛田社長の記事が掲載され、関心を集めています。
その中で、コンシューマ向けカメラに関係する2つの注目すべき発言がありました。
1
スマートフォンで育った世代には、性能面で他社に差をつけた“ニコンらしい”ミラーレスカメラを出す。
2
産業用レンズ技術を活用し、レンズの性能で圧倒したい。
かつてNikonを愛用し、現在でもいくつかのレンズをSonyのミラーレスカメラで活用している立場としては、いずれもとても期待される内容です。
ですが、いずれの発言にもちょっとひっかかるものがあります。
項目1については、「スマートフォンで育った世代には」という限定修飾表現にちょっとひっかかるものがあります。これは、“スマートフォンで育った世代”向けのミラーレスカメラを出すとおっしゃっていることとほぼ等価です。ということは、経済性(コスト、価格)や使いやすさ、機能の点で、“スマートフォンで育った世代”に向けた“調整”を行ったミラーレスカメラであると推定されます。
確かに、現在話題になる、ソニーやパナソニック、フジ、オリンパスなどのミラーレスカメラは、どちらかと言うと“尖った性能”を強調するものが多く、必然的に価格も高くなっています。ソニーのα6000→α6300→α6500に関して言えば、日常的な撮影状況での静止画の品質としては、ほとんど変わりがないのに、4Kムービー(α6300、α6500)やIBIS(α6500)機能の付加により、カメラの価格は大きく上昇しました。
その点で、“スマートフォンで育った世代”という購入者を絞ったミラーレスカメラを商品化するのは一種のニッチであるかもしれません。
でもちょっと、ニコンに期待するミラーレスカメラとしては、その技術や高い品質水準がフルには発揮されないものになるような、できれば杞憂であって欲しい不安感が少し残っていました。
そこに、DPReviewにNikonからの正式なステートメントが掲載され、その開発中のミラーレスカメラは
“…that build upon
Nikon's strengths, and offer the performance prospective customers expect,
including the ultimate optics performance, image-processing technologies,
strength and durability, and operation”
なものであると記述されています。
概要は
「ニコンの強みを活かして開発製造し、究極の光学性能、イメージ処理技術、強度や耐久性、操作性の高さなど、カスタマーの期待に応える性能を提供する」
ということでしょう。
この表現であれば、ニコンの高い技術をふんだんに取り込んだ、“尖った”ミラーレスカメラとなるものと期待できます。
2のレンズ開発に関しては、これも「産業用レンズ技術を活用し」の部分がひっかかります。産業用レンズというのが、露光装置向けのステッパーレンズを意味しているのであれば、コンシューマ用レンズとはその設計思想において大きな違いがあるからです。
言うまでもなくステッパーレンズは
a.
単色光
b.
平面を平面に高解像度で投影する
ものですから、色収差やボケのことを考慮する必要は全くありません。
言ってみれば、「二次元を二次元に正確に投影するレンズ」です。
現在話題になっているレンズは、ピント面での解像度の高さはもちろんのこと、オフフォーカスのボケの美しさについても様々に特徴を持たせてあります。こちらは「三次元の実世界を二次元のイメージに美しく写し込むレンズ」となるでしょう。
ですから、「産業用レンズ技術を活用」することが、コンシューマ用レンズの画期的な性能につながるとは、ちょっと考えにくいのです。この点についても、私の誤解、杞憂であることを願っています。
0 件のコメント:
コメントを投稿