4月に
不思議な色の花(ヒスイカズラ)人面花(アリストロキア・サルバドレンシス)
の中で、京都府立植物園のアリストロキア・サルバドレンシスについて紹介しました。この花は、その姿からダース・ヴェイダーにも例えられています。
Aristolochia salvadorensis 2015年6月27日、京都府立植物園 |
この植物園の温室には、アリストロキア属で同じような花姿をしているものがあと2種類栽培されています。
Aristolochia tricaudata 2015年6月27日、京都府立植物園 |
Aristolochia arborea 2015年6月27日、京都府立植物園 |
これで、「ダース・ヴェイダー三兄弟」なのだそうです。それにしてもアリストロキア・サルバドレンシスは2ヶ月以上咲き続けていることになります。
これでおしまいではありません。アリストロキア属のもう一つの花が近くに咲いているのです。
Aristolochia odoratissima 2015年6月27日、京都府立植物園 |
アリストロキア・オドラティッシマAristolochia odoratissimaです。odoratissimaですから、花のにおいがとても強いようですが、撮影した時にはそれほど感じませんでした。
英名Fragrant Dutchman's Pipeからもにおいが特徴であることがわかります。Dutchman's
Pipe(オランタ人のパイプ)は、煙草のパイプの形からの連想です。
Aristolochia属の名称は、古代ギリシャ語のaristos (άριστος) "best" + locheia (λοχεία),
"childbirth" または "childbed,"に由来するものとされており、古代において、出産に関する薬草として使われていたことを想起させます。
中国漢方でも同じ属の植物の「関木通」(かんもくつう)が泌尿器系統の薬剤として使われてるようです。
ところが、成分のアストロキア酸には、腎毒性、発がん性などが確認されており、実際に関木通を含む漢方薬で腎障害が日本でも生じたことがあります。
詳しくは
有害なアリストロキア酸を含むハーブによる健康危害
をごらんください。
また、関木通は木通(モクツウ)と同じ生薬と誤解されていることもあるようで、木通(モクツウ)はアケビ科アケビですから、全く違います。
一方で、Aristolochia属の植物は、ヘビに咬まれた際の毒消しになると古くから言い伝えられてきています。
ギリシャの哲学者、政治家のキケロの著書「予言について」の中では、
「ヘビに咬まれた傷に有効である」と書かれています。そこには面白いことに、「その名前が発見者のアリストロコスに由来する」とも書いてありますが、実際には実在しない人物で、前述のような名前の由来が正しいようです。
このヘビ毒に対する解毒作用ですが、最後に紹介しましたアリストロキア・オドラティッシマについて、動物実験が行われ、サイカサというヘビ毒に関して実施されており、ある程度の効果が実際にあるようです。
Anti-snake
Venom Effect of Aristolochia odoratissima L. Aqueous Extract on Mice
A. Usubillaga et al.
Proc. WOCMAP
III, Vol. 3: Perspectives in Natural Product Chemistry
Eds. K.H.C. Başer,
G. Franz, S. Cañigueral, F. Demirci, L.E. Craker and Z.E. Gardner
Acta Hort. 677, ISHS 2005
いにしえびとの経験をもとにした知恵には奥深いものがあります。
今回の写真は全て、Sony FE 90 mm Macroを用いたものです。
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