京都府立植物園には植物生態園があります。日本の森の生態にできるだけ近い形で様々な植物を展示してあります。
最近まで雨が降り続き、十分に湿り気の加わった森の中で、この時期その花色、花の大きさ、そして強い香りで圧倒的な存在感を示しているのがユリたちです。
ちなみに、この生態園は、特定の地域の自然を再現したものではなく、日本各地の植物を植栽しており、特に、絶滅危惧種の育成にそれとなく力点が置かれています。
この時期の日本のユリといえば、オニユリとヤマユリ。まずはヤマユリから。
ヤマユリ Lilium auratum 2015年7月11日、京都府立植物園 |
関西地方より北部の本州に主に分布しており、直径が20 cmを超える巨大な花と、極めて強い香りが周囲を圧倒しています。
このヤマユリの2つの変種も開花していました。その1つが ベニスジヤマユリ(紅筋山百合)です。ヤマユリの中から、稀に変異して生じるもので、ヤマユリの黄色の筋が、幅広い紅色になったものです。
ベニスジヤマユリ Lilium auratuma var. rubrovittatum 2015年7月11日、京都府立植物園 |
ルージュでアピールしている“美女”といってところでしょうか。10年に1度出現するほどの希少な変異のようです。
もう一方の“美女”がサクユリです。
サクユリ Lilium auratuma var. platyphyllum 2015年7月11日、京都府立植物園 |
こちらは斑点の赤い色がなくなり、すっきりした花色で、楚々とした雰囲気を漂わせているように見えますが、斑点の棘状の突起が近寄りがたさを示している一方で、花のサイズは30 cmほどとさらに大きくなり、グラマラスな魅力に満ちています。
サクユリは伊豆諸島の固有種で、島では優良品種の選抜が行われ、球根が販売されており、一方で、デンプンを焼酎の原料に利用しているということです。
ユリには下をむいて咲くグループがあります。オニユリです。
植物生態園では近縁のコオニユリが咲いていました。
コオニユリ Lilium leichilinii f. pseudotigrinum 2015年7月11日、京都府立植物園 |
オニユリは日本では三倍体がほとんどで、そのため、オニユリは日本原産ではないと考えられています。しかし、対馬には二倍体のオニユリが多く自生しています。三倍体は原則として不稔性ですが、二倍体であれば種子ができますので、変異株が生じる可能性が高くなります。その中の1つが、オウゴンオニユリです。
オウゴンオニユリ Lilium lancifolium var. flavoflorum 2015年7月11日、京都府立植物園 |
花色が黄色に変異しています。
最後に、ウケユリ。
ウケユリは、奄美諸島固有種で、請島(うけしま)などに自生しています。(本年(2015年)の開花を紹介した新聞記事がありますので、まだ絶滅には至っていません)
ウケユリ Lilium alexandrae2015年7月11日、京都府立植物園 |
園芸品種カサブランカにつながる交配元にもなっています。
植物生態園では、これらの花が咲き誇っていまして、花本体が見えなくても強い香りが誘っていました。
この香り、花の中でもトップを争う強さだそうで、その香りを好む多くの人がいる一方で、嫌いな人もいるようです。また、会食の場などで強い花の香りが好ましくない場合もあります。
そのため、ユリの香りの抑制剤の研究が農水省の平成23-25年度推進事業としてなされました。基本的な考え方は香気成分を合成する酵素の活性を阻害する物質を、切り花の活け水に添加するもののようです。
使用したレンズはSony FE 90 mm Macroです。f8.0
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