左隻と右隻をつなぐ大きな楕円環
右隻の夏草と左隻の秋草は、独立に存在しているものではなく、また、単なる対比として存在しているものでもありません。
この左隻と右隻をつなぐ大きな楕円環が存在しています。
まず、左隻、右隻それぞれの流れを示します。
左隻は風の流れが下から左上に、右隻は水の流れが上から右下にあります。
この2つの流れが左右の絵をつなぎとめる大きな楕円環が浮かび上がります。
左隻で注目すべきことは、飛んでいる3枚の蔦の葉(上部の◯で囲んだ葉)は、右下のまだ茎にとどまっている葉と対応しているように思われることです。つまり、茎にとどまっている葉の一部が同時に飛んでいるように描かれていると考えられます。
この点については、確実ではありません。
それは
確認するにはもう少し精密な図や直接観察が必要であることと、ススキに重なっている蔦の葉が、背景のススキを描いている絵の具の影響を受けいて変色しているため単純な比較が困難であることによるものです。
仮に、この推定が正しいとすると、同一画面に異なる時間のものを描く異時同図法に従っているといえます。
つまり秋風の突風で引き離された蔦の葉の示す2つの時刻の間の時間差である1〜3秒ほどの現象を左隻は表していると考えられます。
それでは右隻はどうでしょうか?右隻は一見すると、静止した時間を示しているように見えますが、そうではありません。
右隻の構図を築いているものは、雨です。ここに描かれたのは、雨の結果すすきの葉がしなだれていることや小さな水流が生じたことを示しています。
その意味では、右隻は数十分から1時間程度までの間の出来事を凝縮しているといえます。
左隻
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右隻
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季節
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秋
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夏
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動きの主体
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風(空気)
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水
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密度
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低い(気体)
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高い(液体)
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時間スケール
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数秒
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数十分〜1時間程度
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時間
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微分的(dt)
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差分的(Δt)
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この楕円環の流れを担っている要素が、左隻と右隻では異なります。
左隻では密度の低い空気の極めて短時間の流れが円環をドライブしているのに対し、右隻では、密度の高い水の長時間の流れがドライブしていることになります。このように対比的な特性により楕円環がスムーズに流れているのです。
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