2016年3月1日火曜日

酒井抱一 夏秋草図屏風 その5 すすき

酒井抱一の植物画を詳しく見ますと、精緻に観察していることがよくわかります。写実とはちょっと違うのですが、対象となる植物の特性をじっくり観察し、よく捉えています。

夏秋草図屏風のすすきについては、右隻の夏の夕立後のたたずまいと、左隻の秋の木枯らしに耐えるたたずまいの描き分けが見事です。


加えて、群叢していても、一本一本の植物体を画面の範囲でしっかり連続的に描き出し、そのため、単なる構図ではなく画面の端を超えたひろがりを感じることができます。

酒井抱一 夏秋草図屏風 ススキだけを抽出したもの

このしっかりした観察に基づく描き方は、同じ琳派の流れをくむ、大正・昭和期の画家の作品と比較すると、その特徴が際立ちます。
木島桜谷の屏風絵「薄」の右隻の一部を拡大したものが下のものです。

木島桜谷の屏風絵「薄」 右隻の部分
全体に薄が群叢している様子がよく描かれているのですが、細かく見ると、不思議なことがいっぱいです。中央部には葉が描かれているのですが、その葉が付着しているはずの茎が全く見当たりません。右側には、茎と穂が描かれていますが、茎の分布と葉の分布が一致しません。

つまり、この屏風絵「薄」は、ススキをモチーフにデザインしたものであって、ススキを描いたものではないのです。
それはそれなりに美術の一つの方向性を示すもので評価すべきことなのですが、酒井抱一のススキのような植物体のしっかりした構図に基づく安定感や定着感はありません。

それでは、ススキに関して酒井抱一の場合は写生であって、木島桜谷の場合はデザインであると言い切って良いのでしょうか?

実はそうとも言えないように思います。そして、酒井抱一のススキには、奥深い「構造」が潜んでいるのです。


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