フィルム、特にリバーサルフィルムは露出のラティチュードがとても狭く、最適な露出で撮影しないと満足できる結果にはなりませんでした。
その感覚がある一方で、デジタル写真のRAW現像では露出補正を自然に行っていました。それでも、±1/3段とか±0.5段ほどの補正しかしていません。
そこで、デジタル写真では、どの程度露出オーバーやアンダーのイメージを救済(露出補正)できるか試してみました。
テストに用いたカメラはSony α6300に90 mm f2.8マクロレンズです。
Sony α6300の結果は、α6000にもα6500にもほぼ当てはまります。
また、Sony α6300は12 bit RAWですので、14 bit RAWの機種なら、これよりも幅広い露出補正が可能と思います。
撮影したものは、クリスタルガラスで作ったバラの花で、様々な色はプリズム分光効果により生じたものです。
AE撮影で適正露出であった写真です。
露出アンダーの救済
ここから、マニュアル露出に切り替えて、シャッタースピードを下げて行きます。3 2/3段まで露出アンダーで撮影しますと、以下のような写真になります。
クリスタルガラスのブリリアントな輝きを除くと、ほとんど真っ暗です。
このイメージをCapture Oneで+3.66段露出補正したものが以下の写真です。
ちょっと見ると、適正露出のものとあまり変わりがありません。
露出オーバーの救済
一方、適正露出から3 1/3段露出オーバーにして撮影したものが
です。かなり飽和した写真になっています。
これを同じくCapture Oneで-3.33段露出補正したものが以下の写真です。
これも、普通に適正露出で撮影したものとあまり変わりがありません。
これらのことを一つにまとめ、さらにヒストグラムの情報を加えたものが以下の図になります。
適正露出のヒストグラムと比較すると、露出オーバーや露出アンダーではヒストグラムが大きく偏ります。それを露出補正すると、ヒストグラムで見ても適正露出とほぼ同じヒストグラムになります。
このことをまとめますと、「一般の被写体」の撮影であれば、±3段程度の露出オーバーやアンダーは、RAW現像の露出補正で救済できることになります。
ただし、補正したものを細かく観察しますと、全く問題ないとは言えません。
露出アンダーに関しては、ヒストグラムの戻りは良いのですが、イメージを細かく見るとノイズが目立ちます。これは、考えてみれば当たり前のことで、センサー固有のノイズは露出に関係なく一定ですが、+方向に露出補正するということは、補正量と同じだけノイズを増幅させることになります。この例では、+3.66段、ノイズが増幅されています。
露出オーバーの補正に関しても、問題があります。露出オーバーで飽和してしまったピクセル情報については、露出補正でもとのピクセルには戻りません。この写真では目立ちませんが、別の被写体(土鈴に着色したマットな被写体)では、色に変化が生じた部分がありました。
±3段程度が、露出補正の限界と考えるのには、もう一つ理由があります。Capture ONEの露出補正のスライドバーは±4.0が上限、下限です。それ以上の補正は、さらに別の機能を使って行うことができますが、単純な露出補正としては、±4.0程度までしか実用的でないために、このような設定をしているものと思います。
カメラの自動露光の技術が発達してきており、この写真のように極端な露出オーバーやアンダーの写真など撮影するはずがないと思われるかたもいらっしゃるでしょうが、花の写真では、花の色によっては、無補正では適正露出にならないことがあります。
そのため、露出ブラケット撮影を行うのですが、この実験からわかったことは、±0.3段程度のブラケット幅であれば、現像ソフトの露出補正で十分にカバーできる範囲であり、ブラケット撮影をする必要がないか、あるいは±0.5段、±1段程度のブラケット幅にするのがより適切であるということでした。
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