2015年5月3日日曜日

興福寺 南円堂の藤

興福寺の南円堂の藤については、51日に書きました。その後、記憶違いがあり、訂正いたしましたが、全体が述べられていない点があり、ここで改めて整理します。

まず、南円堂付近の藤棚についての写真で全体を概観します。
興福寺 南円堂近辺の2つの藤棚

興福寺、南円堂には、右近の橘に対して左近の藤の藤棚が、南円堂に向かって右側にあります。そしてそのすぐ近くのお不動さんを祀った不動堂にも藤棚があります。

この2つの藤は、品種が違います。
左近の藤で開花状態が最も良かったものが下の写真です:
左近の藤 ノダフジ
これに対して不動堂の藤は八重です:
不動堂の藤(八重黒龍?)
左近の藤は、ノダフジという種で、野山に普通に見るフジと同じです。
一方、不動堂の藤は品種名の表記はありませんが、八重黒龍という品種と思われます。こちらは樹勢壮健で見事に開花しています。残念ながら、すでに落花盛んの状態になってしまいました。


左近の藤の由来は、南円堂の建立者である藤原冬継(ふじわらのふゆつぐ;775-826)が手ずから植えたものが戦火などの混乱を経てかろうじて生きながらえていたが、小保寛文年間(17世紀中葉)に新たに植え替えられたことを示す碑文があるそうです。
南都八景の一つになっています。
基部を見ると、相当の古樹であることがわかります。
左近の藤の基部


主幹はだいぶ痛んでおり、樹勢はあまり芳しいとは言えません。
左近の藤の開花状況(2015年5月3日)

この藤のもう一つの大切な点は、奈良気象台の植物季節観測用標本(いわゆる標本木)になっていることです。
この左近の藤が開花すれば、「奈良市の藤が開花しました」と公表することになります。ソメイヨシノの開花について、同じように標本木を気象庁の職員が観察して開花を宣言するというニュースが毎年ローカルニュースで放送されますが、それと同様のことを行う標本木です。

標本木には、その目的上、2つの特性が求められると想像します:
1.       開花時期がその周囲の同種の樹木のほぼ平均的なものであること(横断的要件)
2.       長年にわたって同一の標本木のデータが蓄積されており、これからも蓄積され続けること(縦断的要件)

今年に限って言えば、本日の時点で、左近の藤(標本木)はほぼ花が散っているのに対して、春日大社周辺のノダフジのほとんどは、満開です。
また、隔年開花の可能性も考慮に入れる必要がありますし、何年か前には見事に開花しているのを見た記憶もありますので、なんとも言えませんが、標本木としての役割を今後も長期間続けられるよう、樹勢が回復してほしいものです。

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